水もみとスチームをする理由

まずはなぜ流行りのお湯ではなく水なのかという点です。
それも当店の水もみはつける秒数は2～3秒ほど。
これはおそらくかなり短いほうで、かつ温度が低いので染み込みにくいほうになります。

通常、湯もみは40～60度くらいに15秒ほどつけることが多いです。
なぜ、短時間、低温なのか。
これは本体の革にあまり水を吸い込ませようとしていないからです。
紐は伸ばしながら固めたい。でも本体は少し濡らす程度でスチームで型をつけたいからです。

当然グラブ、紐の様子によって秒数は変えるのですが、アトムズ系列のグラブですとこの時間で大丈夫。
本体に水をあまり染み込ませたくない理由は、芯まで濡れると乾く速度に差が生まれるから。

グラブに染みができる原因として、乾く速度の差という点があります。
濡れた芯と重なっている部分と、そうでない部分に乾く速度に差があると、その境目に染みができます。

温度については今まで60度から50度、40度、そして秒数も15秒から徐々に少なくしていきましたが、後でスチームに入れるならば大丈夫。
高くて長い時間と比べても型付けの差はあまり感じない上にダメージは1番少ないです。

まず最初にやること

1番初めにグラブの紐を解きます。
この理由は紐を結んだ状態で型付けをすると仕上がりが美しくないからです。
紐がぐにゃぐにゃになってしまいます。

そして次にグリスのチェック。
グリスの量が不適切だとあとでいくらがんばっても良い型にはなりません。
アトムズのグラブで調整を必要としたことはありませんが、違和感を感じたならばまず1番初めにグリスを調整しましょう。

水につける秒数

上にも書きましたが、蛇口から出たそのままの温度の水に2～3秒つけます。
これは革や紐によって変えており、水分を吸い込みにくい革の場合は多少長くします。
こればっかりは経験がものをいいますが、MAXでも5秒ほどでしょうか。
中の芯には水がしみこまない程度でOKです。

本体が全然濡れてない！って状態でも大丈夫。
ここで重要なのは紐を濡らすことです。

型付けに共通する注意点

そしてここから型付けが始まるわけですが、絶対に守ってほしいことがあります。
それはグラブに入れている手（右投げ用グラブなら左手）の指に絶対に力を入れないことです。

グラブに水分が入ってる、または温度が高い状態は柔らかくなりやすいのですが、
その際に左手の指に力を入れ、グラブを閉じるとその指の圧力がかかってる点が伸びます。
つまり捕球面がボコボコになってしまいます。

型付けの際はグラブに入れてない方の手主体でやりましょう。
伸ばしたいのは捕球面ではなく背面です。

乾燥までの型付け

全体的に濡れたら紐を伸ばすイメージで型をつけていきます。
ここではグラブ本体は型をつけるというかはほぐす程度
紐は関節となる部分はしっかり伸ばしていくことです。
ただ、あまり気合を入れる必要はないです。

重要なのは乾かしながら型をつけること。
本体は少しだけ濡れている状態なので、型をつけている間にどんどん乾いていきます。
乾かしながらっていう点がポイントで、伸ばしたところが戻りにくいです。

乾燥後のスチーム

乾燥したらスチームに入れていきます。
ここではよくあるのが70度で3分などがYouTubeで公開されていたりしますが、
当店では70度、もしくはそれ以下で10秒ほどを繰り返して入れます。
鉄でもガラスでも水でもそうですが、温度が上がると柔らかくなり、温度が下がると硬くなります。
なので暖かい状態で動かし、そして冷ましながら固めていく。

理想の状態で固めたら、一度ほぐして動くようにして、また温めて固めていく。
これを繰り返すことで型をつけていきます。ここは気合の入れどころ！

捕球面を柔らかくしたくないので、ハンマーの回数は最小回数で、それも捕球面をきれいにする感じで叩きます。
ここでも暖かい状態から冷ましながら叩く。
すると固まっていき、型がつきます。
グラブの様子を見ながら回数は変えますが、大体10秒入れるのを5回ほど繰り返すと完成です。

完成！

この後は紐を結び、そして少し調整すると完成です。
スチームで吸い込んだ水分が抜けると少し硬くなりますので、それも逆算して完成させます。
そして水分がきっちり抜けてからもう一度調整します。

この方法で型をつけると、捕球面の出っ張りが少なく、指先までしっかりついてくるグラブになります。
持ち込み型付けは5500円で承っておりますので、もしご興味がありましたら是非1度ご来店ください。